印刷通販の主な印刷の種類について解説します。
目次
オフセット印刷とは?
オフセット印刷の版(印刷原版)は、片面に撥水性のある感光剤が塗られた厚さ 0.3mm の薄いアルミ板です。印刷する画像を感光させて現像すると、絵柄のない部分だけが光に反応して親水性となり、水が乗りやすくなります。そこで版を水のローラーで濡らし、次に別のローラーで油性インキを塗布すると、撥水性があって水分が付着していない絵柄の部分にだけ油性インキを付着させることができます。
オフセット印刷機では、この方法によって回転ドラムに巻き付けた版にローラーでインキを付着させ、そのインキをいったん別のゴム製回転ドラムに転写してから、ゴム面を用紙に圧着して印刷します。
版に付いたインキを剥がし(OFF)、判を押すように紙に写す(SETする)ことから、オフセット印刷と呼ばれています。
オフセット印刷の画質
オフセット印刷は、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の 4色インキを使用した網点印刷が基本です。ひとつの印刷面を印刷するために CMYK各色の網点(ドット配列)の版を作成し、それを使って 1枚の紙にひと送りで 4色を重ね刷りします。
オフセット印刷は現在主流となっている印刷方式ですが、その画質はオペレーターの技量に大きく左右されます。ポスターや高級なパンフレットなど画質にこだわる印刷物は、オフセット技術の優秀な印刷会社に発注するのが良いでしょう。高画質な印刷が不得手な印刷会社に発注すると、色校正を何度も出させることになって料金がかさみます。
- 高画質な印刷が可能。
- 大量印刷に対応できる。
- 大判の用紙に印刷できる。
- 少部数の印刷は単価が高くなる。
オフセットの印刷機
オフセットの印刷機には
- 枚葉紙(既定サイズの断裁紙)に印刷する枚葉機と
- ロール紙を使用する輪転機があります。
パンフレットなどの冊子類は枚葉機が適していますが、大量印刷する折込チラシや新聞、雑誌などは高速で印刷できる輪転機が適しています。
オンデマンド印刷とは?
オンデマンド印刷で印刷した名刺
オンデマンド印刷とは直訳すると「需要に応じた印刷」という意味ですが、より狭い意味で「短納期・少部数の印刷」のことを指しています。
印刷通販では、粉体トナーの業務用レーザープリンターで印刷されたものを「オンデマンド印刷」と示すことが多いです。
そのほかデジタルオフセットと呼ばれる液体トナーの業務用レーザープリンターで印刷されたものもありますが、こちらはオンデマンドながら「オフセット」と示している印刷通販会社もありました。
従来より印刷の主流となっているオフセット印刷では、版を作る刷版や試し刷り、色校正などにある程度まとまった時間と資材・経費が必要です。しかし、レーザープリンターの進歩によってデジタル網点が可能となったことで、簡単かつ迅速に低料金で行えるようになりました。
オンデマンド印刷の画質
オンデマンド印刷の業務用レーザープリンターの着色材料としては、樹脂の微粉末に顔料の微粒子を付着させた粉体トナーが一般的です。
粉体トナーのレーザープリンターは、4色印刷のほか特色を含めて 5色の粉体トナーを使用するものもあります。しかし、基本的にコピー機と同じ印刷機であり、その画質には限界があります。
しかし、「デジタルオフセット」と呼ばれる顔料を溶剤に溶いた液体トナー印刷なら、粉体トナーよりも高精細な印刷が可能です。高品位のオフセット印刷にも匹敵するほどの画質と表現力を実現することもできます。
- 少部数の印刷物を安く注文できる。
- 短納期の印刷に対応できる。
- まとまった部数の印刷ではオフセット印刷より単価が高くなる。
オンデマンド印刷の代表的な印刷機
- 富士ゼロックス Color 1000i Press (粉体トナー、基本4色、最大 5色)
デジタルオフセット印刷とは?
デジタルオフセット印刷で印刷した名刺
「デジタルオフセット」は、液体トナーの網点印刷機(レーザープリンター)を使ったオンデマンド印刷のことです。
粉体トナーのレーザー印刷より色むらが少なく、高画質な印刷が可能です。
オンデマンド印刷は Print on demand の訳語ですが、「デジタルオフセット」は印刷業界の一部で使用されている新しい和製英語です。
レーザープリンターの網点印刷やインクジェットプリンターの印刷をデジタル印刷 Digital Printing と呼ぶことや、液体トナーによる印刷画質がオフセット印刷の画質に極めて近いことから生まれた造語なのでしょう。
- 高品位なオフセット印刷に近い高画質。
- 少部数の印刷物を安く注文できる。
- 短納期の印刷に対応できる。
- まとまった部数の印刷ではオフセット印刷より単価が高くなる。
デジタルオフセットの代表的な印刷機
- HP Indigo Digital Press (液体トナー、基本4色、最大 7色)
軽オフセット印刷とは?
オフセットの版をアルミではなく紙で作る印刷方法です。
現像すると感光剤がピンク色に変色するので、その紙版はピンクマスターと呼ばれています。
ピンクマスターは紙製ですから耐久性がありません。オフセット印刷の版は 10万枚程度印刷できますが、ピンクマスターでは 2000枚程度が限界です。また、解像度が低いので画質が悪く、鮮明な写真印刷をすることはできません。
したがって、軽オフセットの需要は文字だけの印刷物が中心です。500部から1,000部程度の冊子類を短納期・低価格で印刷できます。
- 少部数の冊子印刷が低価格・短納期。
- 2,000部程度の少量印刷にしか対応できない。
その他の印刷方式
インクジェット印刷
業務用インクジェットプリンターを使用する印刷です。プリントヘッドのノズルで微細なインク滴を噴射し、用紙の正確な位置に着弾させて絵柄を描いていきます。
液体トナーのレーザープリンターによる印刷と似ていますが、液体トナーでは顔料が固体の粒子状のままで溶剤に含まれているのに対し、インクジェットでは染料が溶融している染料インクが主に使用されます。そのため、液体トナーは用紙の表面に層をなして付着しますが、インクジェットの染料インクは用紙の中にまで浸透してとどまり、深みのある発色や微妙なグラデーションを表現することができます。
したがって、インクジェットは写真印刷に最適な印刷方式です。特にキヤノンのフォトプリンター DreamLabo 5000 の純正プリントは高品位のオフセット印刷を超える表現力をもち、高級な銀塩プリントにも勝る暗所保存300年というアルバム耐久性をも達成しています。
銀塩プリント
印画紙を使った写真印刷のことです。デジカメとパソコンの普及でプリントショップは激減しましたが、ネットプリントの普及で銀塩プリント自体の人気は回復したようです。
現在、写真プリントの国内市場は富士フイルムの FUJICOLOR が圧倒的なシェアを占めていて、とりわけ銀塩写真の高級プリントといえば FUJICOLOR という状況です。出力機のミニラボも富士フイルム製のフロンティアシリーズがトップシェアを確保しているようです。
しかし、その一方でネットプリントの激安アイテムの定番として「オリジナルプリント」と呼ばれている普及版の写真プリントも健在です。それらの多くは三菱製紙、オリエンタル写真工業などの国内メーカーの印画紙です。FUJICOLOR と比べて画質は大差ないように感じられますが、ノーブランド品という扱いで安売りされています。
印刷よりもグラデーションが滑らかで美しい仕上がりですが、エッジがボケるので書籍の印刷には向きません。
シルクスクリーン印刷
製版したメッシュの版を布などの上に重ねてシルクスクリーン印刷機にセットします。次にスクリーンの上にインクを盛り、スキージーというへらでインクを引いて、メッシュを透過させたインクで印刷します。
紙やボードなど様々なものに印刷でき、身近なものとしてはTシャツの印刷があります。版を複数作って多色刷りすることも、写真を原稿としてリアルな写真をプリントすることもできます。